野菜は大きく二つに分かれます。つまり、実を食べるのか葉や根を食べる野菜なのかという区別が大切なのです! 実を食べるためにはまず花を付けなくてはいけませんが、葉や根を食べるためには花が咲いてはとても困ります。 トマト、ナス、きゅうりなどは前者です。果菜類とよばれ茎葉が茂りすぎると花が付きにくくなります。 反対に、キャベツや葱やほうれん草や大根や人参は後者で、花芽がつくと葉根にまわる養分がストップし食べられなくなります。
【花が咲かないようにする方法】
大根、かぶ、白菜・小松菜など菜類一般などアブラナ科のほとんどは、寒くなると種をまいてはいけません。 低温の程度は品種に依存しますが、シードバーナリ型と言って種まき時期がポイントです! キャベツや玉葱・葱・ごぼう・人参などは種まき直後ではなく、ある程度成長して低温感知センサーが寒さを感知すればアウトです。 これをグリンプラント型といって、大苗で冬越ししないような作型を選ぶことがポイントです!(大苗の程度は品種によりことなります) レタスは高温でトウが立ちやすくなります。涼しいところで育てることがポイントです。 ほうれん草は日長が長くなるとトウ立ちが問題になります。長日感応と言って光がポイントとなります。
【花が咲きやすくする方法】
花が咲くのは子どもを作るという生殖本能に目覚めるときです。体が元気だとさらに大きくなろうとし、逆に「老い先短し」と 自覚したら早く子孫を残そうとする本能が働くのです。まったく、人間を含めた生き物と同じ法則に支配されているのです。 トマトやカボチャなどすべての果菜類、とくにエンドウや大豆などの豆類は肥料をやりすぎると花が付きませんし、 花が咲いても落花します。冬の到来(短日や低温)とか肥料切れや環境悪化などのストレス要因がポイントとなります。
植物は春になると一斉に花を付けます。なぜ?そしてどのように?春を感じるのでしょうか? 冬の低温で春が近いことを知り、温度の上昇で春の到来を感じとるグループをバーナリタイプといいます。種の状態で低温センサー がONとなるのがシードバーナリ。苗の状態で低温センサーが働くのがグリンプラントバーナリということを前項で述べました。 春の彼岸に日長が12時間を越えるように長日に変化するときに春を感じるのを長日感応といいますが、ほとんどの長日野菜は 低温センサーの方がより強く作用するようです。したがって、少数の『例外!』を除き、 どのようにして低温を感じさせないようにするかが、花が咲かない=トウ立ちをさせないための最重要のポイントです! 法則は例外を知ることで完璧に理解できます。野菜作りで問題になる例外は2つだけです! 第一はレタス類。レタス類は春と言うより夏の高温を感じないと花が咲きません。つまり25℃以上の暑い季節は栽培できない! もしくは、非常に作りにくいのだと覚えておきましょう。レタスが夏場に栽培できるのは高冷地か東日本以北に限られます。 第二はほうれん草。ほうれん草は低温センサーより光センサーが敏感に敏感に働く代表的な野菜です。佐世保では12~2月の 厳寒期でも平気で露地で栽培できます。低温センサーはまるで作動していないみたいです。痴漢よけの街灯がある真下付近 の畑や、夜遅くまで勉強している受験生のいる窓辺のそばの畑やプランターでは、ほうれん草つくりは危険なのです! 夜明るいから、冬でも長日だと感じるのでしょうね!
【低温短日】
一般に実をつける野菜はエンドウやソラマメを除き20~25℃以上の比較的高温を好み、春から夏にかけて旺盛に成長します。 でも秋の気配(低温化と短日化)を感じると冬支度を始めなきゃいけないという法則により花を咲かせ早く実をつけようとします。 カボチャや昔のキュウリは苗を植える直前にやや低温にさらし夕方やや早めに遮光すると雌花の付きがよくなります(低温短日育苗)。 秋大豆や秋小豆は早く蒔きすぎるとまだ暑いうちに開花受精期となるので、花が落ち実がつきません。
【良いストレス、悪いストレス】
何らかのストレスを感じることがきっかけで生殖本能に目覚めるから花を咲かせ実をつけようとすると前に述べました。 低温短日もストレスの一種だと考えられますが、栄養状態の需要と供給のバランスが変化したときに強くストレスを感じるようです。 青梗菜などはシードバーナリーなので夏場は花は咲かないはずですが、高温乾燥・肥料切れなどでトウ立ちしてしまいます。 適度のストレスが花芽分化に必要不可欠なのですが、度が過ぎると悪影響が生じてしまいます。 柿やミカンなどの果実類はなりすぎた翌年はほとんど実がつかず次の年にまたよくなるようになります(隔年結果)。 ツツジやボタンなど落花後の「お礼肥やし」を忘れるといくら葉が茂っても翌年の花は咲きません。 一本仕立てのトマトなどは低位置の花房の着果以降に肥料切れを起こすと上位段の花芽分化や着果が著しく悪くなります。 カボチャやキュウリやエンドウなど、着果後、肥料切れを起こすとうどんこ病が急激に発生します。 赤ちゃんがお腹にいる母親と同じように、子どもができた野菜は種の存続のため我が身を削って養分を子どもに集中しようとします。 自分と子どもと二人分の栄養が必要になったとき一人分の栄養のままだと、どちらもダメになるのは当然ですね! 上記の例で言うとトマトもカボチャもキュウリもエンドウも、着果したら忘れずに追肥をしなければならないのです!
中学校で習うのですが、発芽の三要素は温度・水・空気です。 光が必要な少数の例外と硬実・休眠(裏技参照)を覚えておけば完璧です。養分は無関係です!
【温度】
春野菜で特に問題となります。早春蒔きの果菜類を蒔くとき、ビニール被覆をしたのに芽が出ない!種が悪い!・・・ というお叱りをよくいただきます。しかし、この場合の温度は地温であって気温ではありません。昼間は暖かいトンネル内の空気も 夜は屋外と全く同じに温度が下がってしまうのです!温度を確保するのは空気ではなく種を蒔いた土なのです。したがって、 有機物の踏み込みや電熱線による加熱温床をしない限りむやみな早蒔きは絶対にしてはいけません。
【水】
秋野菜で特に問題となります。発芽しにくい代表選手である人参の所をぜひご参照ください。 発芽という細胞分裂には水分が不可欠であると言うことはどなたもご存じですね。しかし、いくら水分量が十分あっても、 途中で途切れることがあれば、細胞分裂も中断し、最悪の場合死んでしまうことはあまりご存じではありません。 保育器の中でしか育たない赤ちゃんを気まぐれで出したり入れたりすれば当然死んでしまいますよ! つまり、発芽して自分で水を吸水できるようになるまでは種子の周りの水分に頼り切った赤ちゃんのようなものなのです。 発芽の前に種子の下部周辺に十分水分があること。土をかぶせたら十分抑えること。乾燥しないように通気性のある覆いをすること。
【空気】
あまり厚い土かぶせは、種子が持ち上げられないし、水分を含んで密閉されると呼吸できなくなります。 よって、種子の大きさの倍程度の土かぶせが理想です。 ただし、人参やパセリやセロリや三つ葉などのセリ科、レタスや春菊などのキク科、シソや多くのハーブ類などは、土かぶせはしません。 土かぶせしない大きな理由は種子の好光性によるものですが、パンジーやリビングストンデージー、ツリガネソウ、キンギョソウ なども種が小さすぎることもあり同じように土かぶせしません。この場合は種まきしたら十分押さえつけておきます。
苗半作と言います。苗がよくできれば半分は成功したも同じという意味です。ぜひ、苗作りの楽しさを経験してください。 第一は土(別項参照)。最近は市販の種まき培養土を用いることが多く問題になることは少なくなりましたが一番大切です。 私もこだわりがあり、既存のメーカ品に飽き足らず、市川種苗店自家製の種まき培養土を開発し店頭販売しているほどです!(後述) 第二は水やり。露地での育苗はなかなか難しいので雨よけで人手で水管理をすることが大切です。 基本的に苗作りの潅水は朝が最適です。午後三時以降の水やりは夜間湿度を上げるので苗を必ず徒長させてしまいます。 セルや箱育苗は、コンテナ一つ分ほど地表からはした位置で行ないましょう。夜間湿度を下げることができるので徒長を予防します 第三は光です。朝十分に水をやった後は十分太陽光線に当て、夕方水はやらず朝まで辛抱する。これががっちりした苗作りの 秘訣です。萎れを心配して日陰で育苗したり、古いビニール被覆で我慢していたりすると徒長したり生育が遅れます。
深く全体に混ざるように、また、時間的な余裕を持って施すのが元肥の基本。 長期にわたる果菜類栽培以外での局所施肥はラクしたい人間の都合です。硝酸態窒素の流失を避けるために側条局所施肥が 自治体により推奨されていますが、根は側条などの肥料のある場所だけに分布するわけではありません。 さらに、肥料は施肥された固体のまま植物に吸収されるわけでもありません。もし、そうであれば肥料は塩と化学的性質は同じなので 長時間の降雨ですぐに流失してしまうはずです。でも、マイナスに帯電した土や堆肥表面にくっついたプラスイオンの肥料分は なかなか流れ出しにくいというメカニズムが働いてくれるのです。 例外はマイナスの硝酸イオン。これは土と電気的に反発するので小細工を労してもすぐ流れ出してしまいます。 追肥は即効性の窒素を多く含んだ肥料を与えるのが原則ですが、作物や作型により様々です。 畝をでんぐり返すわけにはいかぬので、株と株のあいだやスジ植えの真ん中あたりにふって弱く耕しておきます(中耕)。 液肥による追肥は即効的ですが持続力がないのでやはり普通の肥料を用いるのが基本です。
石灰をやってどのくらいで作れるのか?どんな石灰がよいのか?など、よく質問を受けます。 また、石灰は土の消毒なので どんな野菜を作るときもたっぷり入れなければならないと思い込んでいる方が多いように思われます。正しいのでしょうか? 石灰の種類は施肥の仕方による分類では3種類です。石灰窒素や生石灰は加水分解によるガスで高熱が発生します。 消石灰は加水分解により炭酸カルシウムに変化するのですが、化学変化変化するのにちょっと時間がかかります。苦土石灰や カキガラなどの有機石灰は主成分が炭酸カルシウムで、これ以上化学変化はしません。従って化学変化に要する時間により 種まきや作付けまでの時間が決まります。石灰窒素は一週間以上。消石灰は数日、苦土石灰や有機石灰は直前でOKです。 土壌消毒や窒素肥料の効果を期待するときは高価ですが石灰窒素が一番です。シアンガスによる土壌消毒効果は抜群で、 被覆するとさらに効果は倍増します。消石灰はアルカリ含有が苦土石灰より高いので少量で酸性中和能力は最強です。 ただセメントと同じなので土が硬くなりやすいなどの欠点もあります。苦土石灰は必須微量要素マグネシウムを含むこと、 有機石灰は不純物として有用微量要素を多く含み、土が硬くなりにくいと言う長所を持っています。 消石灰はアルカリ度が高いので、細菌より小さいウィルスには殺菌効果が高いと思われますが、普通の病害虫に対しては 農薬ほど強い効果があるとは思えません。従って土の消毒と考えるより、酸度の調整と肥料としてのカルシウム補給が主な 役割だと見なしておく方が合理的だと思います。そう考えるなら、野菜によって最適PHは違うし、畑の条件も様々なので、 量を加減しなければならないのは当然です。ジャガイモは酸性に強く、そうか病は中性になるほど発生しやすいので必要なし。 スイカやカボチャダイコンなど酸性に強い野菜は石灰はやらずとも、前作がない畑や水田裏作以外は問題なく栽培できます。 あ!石灰は堆肥と同時散布はしない方が賢明です。堆肥中の大切な窒素分がアンモニアガスとして消失するからです。
【連作障害】
同じ作物を同じ畑で作ることによって障害が発生し、同じ野菜が作りにくくなる障害を言います。栽培植物特有の偏った養分吸収によるミネラルバランスの崩れ。またそれが原因で引き起こされるセンチュウなどの微生物達の 減少や増加による平衡状態の崩れ。そして最終的に有害微生物の増加による病気の発生。これが連作要害の正体です。 名前が違っても同じグループに属する野菜は、虫や病原体から見ると同じもの。したがって、同種ではなく、同属の野菜は 同じ畑では栽培しないほうが良い、または栽培してはいけないのです。(品種によって影響を受ける程度が違います)。 でも、しない方がよいのに、しなければいけない場合のお話をします。果菜類などは連作障害に強い台木に接木することに よって対処できますが、接木ができない根菜や葉菜類などは、土を新しくするか、改良するしか方法はありません。 野菜という人工的な植物を自然という畑に作る行為は、ミネラルバランスや平衡バランスを人為的に崩すことと本質的には同じです! したがって、ミネラルバランスをできるだけ元に戻すようにマグネシウムやホウ素や亜鉛や鉄などの微量要素を還元すること。 有害微生物が増加しないように、湛水処理による土壌消毒を行なうこと。有用微生物を増やすために完熟堆肥を投入すること。 これらが連作障害回避の有効な手段となっています。農薬は一時的には有害微生物を抑えることができますが、良い微生物も 皆殺しにするために、繰り返し消毒をおくなうと、数年で前よりひどい病気が発生するようになるので注意が必要です。
【土作り】
第一に、良く耕すこと。空気が土中深く入るようになり水持ちや水はけなどの物理性質が改善されます。 また、好気性の有用微生物が増え生物学的にも改善されます。ダイコンの項目の「七回耕せ・・・」を参照ください。 第二に、良質な完熟堆肥を最低年一回は投入すること。土つくりに有機質が欠かせませんが良いものでなければ効果が上がりません。未熟なものは分解のために周りからエネルギーとして窒素を逆に吸収 してしまう(脱窒現象)ので、樹皮(バーク)堆肥などは吟味が必要です。また、低温ぼかし肥料は、良質のものならいいですが、 低い発酵温度により生き残った悪い腐敗菌などをばらまく結果となることも多く注意が必要です。、 特に、ダイコンなど根菜類に使う堆肥は、キスジノミハムシなどの害虫の発生を避ける意味で、未熟なものは絶対だめです! 堆肥を投入する場合でも、春堆肥を入れて、秋に根菜類という具合に時間をあけた方がうまくいきます。